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鍼灸院みらい京都桂

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腸内細菌について

腸内細菌、腸内細菌叢(腸内フローラ)について、ご紹介します。腸活サプリメントや腸内細菌検査について興味のあるお客様はご相談ください。

腸内細菌について

 ヒトの体には皮膚表面や鼻腔、口腔、消化管、泌尿生殖器などに細菌が定着しています。そのなかでも90%は消化管に生息し、多種、多様な細菌群が固有の生態系を形成していることから腸内細菌叢(マイクロバイオーム)と呼ばれています。細菌は菌種ごとの塊となって腸の壁に張り付いており、この様子が花畑(フローラ)にみえることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。腸内には1,000種類以上、1,000兆個、重さにして1.5〜2kgの細菌が生息しています。

 生物は、「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」の順の階層に分類されます。腸内に生息する細菌も同様に分類されており、このうち腸内細菌はファーミキューテス門、バクテロイデーテス門、アクチノバクテリア門、プロテオバクテリア門の4つの門に属する菌種が大半を占めています。日本人はアクチノバクテリア門が相対的に多いと言われ、このうちビフィズス菌に総称されるビフィドバクテリウム属が豊富にみられるとされています。ファーミキューテス門にはラクトバシラス属の乳酸菌やバシラス属の納豆菌、ストレプトコッカス属のレンサ球菌、クロストリジウム属の破傷風菌、ボツリヌス菌などがあります。プロテオバクテリア門には有名な大腸菌が属しています。

 腸内細菌の構成には個人差があり、それぞれ自分だけの腸内細菌叢を持っていると言われています。しかし、腸内細菌叢は常に一定ではなく食事や生活習慣、環境、加齢などさまざまな要因によって変化します。

腸内細菌叢(腸内フローラ)のタイプ

 長期間の食生活が腸内細菌のパターンに影響し、おおむね3つのタイプに分類されることが世界的権威のある英国科学雑誌の『ネイチャー』に報告されています(Arumugam M, Raes J, Pelletier E et al: Enterotypes of the human gut microbiome. Nature. 473(7346): 174-80. 2011)。この腸内細菌叢(腸内フローラ)の分類はエンテロタイプとよばれています。

①バクテロイデス属が多いタイプ

 タンパク質や動物性脂肪が多い肉食を中心としている食生活の人によく見られます。中国人や欧米人に多いタイプです。バクテロイデス属は日和見菌で、肥満を防止する作用があるとされ、「ヤセ菌」としても注目されています。バクテロイデス属の中のバクテロイデス・プレビウスは、海藻に含まれる食物繊維を分解できる酵素であるポルフィラナーゼを作ることが出来る細菌で、海苔を食べる習慣のある日本人にはこの菌が生息している場合が多いと言われています。

②プレボテラ属が多いタイプ

 小麦やトウモロコシなど主に炭水化物(穀物)や食物繊維が多い食生活の人によく見られます。中南米やアフリカ、東南アジアの人に多いタイプです。プレボテラ属も日和見菌で、ヒトの口腔内や腸内に生息しています。プレボテラ属のプレボテラ・コプリは、発症したての関節リウマチ患者に多くみられたことやインスリン抵抗性を高めて2型糖尿病の発症に関連していることなどが報告されていますが、大麦食後の血糖上昇抑制効果に関わっているとも言われています。

③ルミノコッカス属が多いタイプ

 上記の①と②のタイプの中間的な食生活をしている人によく見られます。日本人やスウェーデン人に多く見られるタイプです。日本人やスウェーデン人の8割以上がこのタイプと言われています。ルミノコッカス属の細菌は、食物繊維の成分であるセルロースを分解する能力を持ち、草食動物の胃などに生息しています。肥満の人ではルミノコッカス属が増加し、バクテロイデス属が減っていることが分かっています。ミノコッカス属が増えると糖質の吸収と脂肪の蓄積が亢進し、脂肪組織から炎症サイトカインが分泌されて脳梗塞や心筋梗塞、腎臓病などが発症しやすくなるとされています。

 ペンシルバニア大学の研究チームは、長期間の食習慣がヒトのエンテロタイプを決定していることを世界的権威のある科学雑誌である「Science」に発表しました。エンテロタイプは、バクテロイデス属が多いタイプとプレボテラ属が多いタイプに分類されました。また、タンパク質と動物性脂肪の多い食習慣とバクテロイデス属が多いタイプ炭水化物が多い食習慣とプレボテラ属が多いタイプが関連していました。さらに10日間、高脂肪食/低線維食を食べるグループと低脂肪食/高線維食を食べるグループにわけても、もとのエンテロタイプに影響がなかったことから、長期間の食習慣がエンテロタイプを決定していると結論づけています(Wu GD, Chen J, Hoffmann C et al: Linking long-term dietary patterns with gut microbial enterotypes. Science. 334(6052); 105-8. 2011)。

アジアの子供の腸内細菌叢(腸内フローラ)のタイプ

 九州大学、ヤクルト中央研究所、シンガポール国立大学らの研究グループは、アジアの5 つの国(中国、日本、台湾、タイ、インドネシア)の都会と地方に住む7〜11歳の子供(303人)の腸内細菌叢を調べました。その結果、アジアの子供には2つの腸内細菌叢のタイプ(エンテロタイプ)があることが分かりました。日本、中国、台湾の子供に多いビフィズス菌とバクテロイデス属の細菌を主体とするBBタイプインドネシアとタイのコンケンに多いプレボテラ属の細菌を主体とするPタイプに分類されました。プレボテラ属の細菌は、食物繊維の分解酵素が強く、難消化性でんぷんや食物繊維の多い東南アジアの食生活がPタイプの要因となっていると考えられました。また、善玉菌の代表であるビフィズス菌量は日本と中国の蘭州の子供に多く見られました。特に日本の子供の腸内細菌叢には他国の子供に比べて、ビフィズス菌が多く見られ、日本の食習慣や生活習慣が関係していることが明らかとなりました(Nakayama J, Watanabe K, Jiang J et al: Diversity in gut bacterial community of school-age children in Asia. Scientific Reports. 5; 8397. 2015)。

年齢による腸内細菌の変化と腸内細菌の種類















 

 ヒトをはじめほ乳類は、母親の胎内では無菌状態です。自然分娩の場合、産道を通過する時に母親の細菌との接触や外界との接触などによって微生物が感染します。感染した微生物は皮膚表面や口腔内、鼻腔内、消化管内、泌尿生殖器などに定着して常在することになります(常在細菌)。生まれてまもなくの新生児期は大腸菌が多くみられますが、まもなくビフィズス菌が増えて優勢になります。特に母乳で育てられている乳児は、人工乳で育てられている乳児に比べてビフィズス菌が多く増える傾向にあります。一方、帝王切開で産まれた新生児は、母親からの細菌に触れる機会が少ないために、ビフィズス菌が少なかったり、腸内細菌叢の成立が遅れるとも言われています。離乳食をとるようになると、様々な細菌が腸内に定着し、バクテロイデス属やユーバクテリウム属などの細菌が増え、ビフィズス菌は減少していきます。加齢とともに腸内細菌叢の細菌の種類などは変化し、老化とともにウェルシュ菌などの悪玉菌が増加します。

 腸内細菌は、俗に言う「善玉菌」、「悪玉菌」、「日和見菌」に分類されます。「善玉菌」は体に良い働きをして健康維持に貢献しますが、「悪玉菌」は体に害を及ぼすとされています。一方、「日和見菌」は大部分が未知の菌で、他の菌の影響を受けて作用すると言われています。

 善玉菌にはビフィズス菌や乳酸菌、酪酸産生菌などがあります。ビフィズス菌や乳酸菌は、酢酸や乳酸を産生し腸内を酸性にすることで、悪玉菌の増殖を抑制して感染症が起こりにくくし腸内環境を良い状態にします。酪酸産生菌は腸管の免疫機構を調整する作用があります。したがってこれらの善玉菌を増やすことで腸内環境を良い状態にすることができます。しかし、食品などに含まれるビフィズス菌や乳酸菌を口から摂取したものは、そのまま腸内に定着するのではなく、すでに腸内に生息していたビフィズス菌や乳酸菌が増えるのを助けるように働きます。

 悪玉菌にはウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌(病原性のあるもの)などがあります。悪玉菌が優性になると臭い便やおならの原因となるアンモニアやインドール、スカトール、硫化水素など有害な物質を産生したり、発ガン性物質を産生します。また、免疫力の低下、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、糖尿病、自己免疫疾患などの原因ともなります。クロストリジウム属ディフィシルは偽膜性大腸炎の原因となります。

 日和見菌にはバクテロイデーテス門バクテロイデス属(非病原性のもの)、大腸菌(非病原性のもの)、ファーミキューテス門のユーバクテリウム属、クロストリジウム属(非病原性)などがあります。

 これまでには腸内細菌叢の理想的なバランスは善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%の2:1:7であり、善玉菌が悪玉菌を抑えている状態が良いと考えられてきました。近年、腸内細菌の分析方法の進歩により悪玉菌のなかにも体に良い作用をするものも見つかっています。いずれにせよがんや炎症性腸疾患、糖尿病、肥満、動脈硬化、アレルギー疾患、自己免疫疾患などの発症には、腸内細菌叢のバランスの乱れが関連していると考えられており、腸内細菌叢のバランスを保つことが健康維持には重要といえます。

腸内細菌の主な働き

善玉菌

  • 腸内細菌叢のバランスを整え、悪玉菌を抑える。
  • 便秘や下痢を予防する。
  • 免疫力を高め、病原体の侵入を防ぎ排除する。
  • 食物繊維を消化し、短鎖脂肪酸を産生する。
  • リボフラビン(ビタミンB2)、パントテン酸(ビタミン5)、ピリドキサール(ビタミンB6)、ビオチン(ビタミン7)、葉酸(ビタミン9)、ヒドロキソコバラミン(ビタミンB12)、ビタミンKなどのビタミン類を合成する。
  • ドーパミンやセロトニンを合成する。
  • 腸内細菌と腸粘膜細胞で免疫能の約70%を作る。

悪玉菌

  • 腸内の腐敗を進め、下痢や便秘をおこす。
  • アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質を作る。
  • 免疫能を弱める。
  • 発ガン性物質を作る。

腸内細菌と肥満

 

 一般的に太りやすい肥満体質と逆に太らない痩せ体質がありますが、この肥満や痩せに腸内細菌が関わっていると言われています。2006年に世界的に権威のある英国科学雑誌の『Nature』に腸内細菌と肥満の関係性を証明した論文が発表されました(Turnbaugh PJ, Ley RE, Mahowald MA, Magrini V, Mardis ER, Gordon JI: An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature. 2006 Dec 21; 444(7122) :1027-31.)。米国ワシントン大学のジェフリー・ゴードン博士の研究チームは、肥満マウスには腸内細菌のうちファーミキューテス門が多いバクテロイデーテス門が少なかったこと、さらに無菌マウスに肥満マウスと瘦せたマウスの腸内細菌を投与すると肥満マウスの腸内細菌を投与したマウスのほうが体脂肪の増加が大きかったことを証明しました。また、太ったヒトの腸内細菌は、先ほどの研究結果と同様にファーミキューテス門が多く、バクテロイデーテス門が少なかったことや太ったヒトが1年間ダイエットするとファーミキューテス門が減り、バクテロイデーテス門が増えたことも報告されています。これらの結果からファーミキューテス門の細菌はデブ菌」、バクテロイデーテス門の細菌はヤセ菌と呼ばれるようになりました。

 ではなぜファーミキューテス門の細菌が多いと太りやすいのでしょうか。ファーミキューテス門の細菌は、本来便として排泄される脂質や糖質の分解能が向上し吸収してしまうため、太りやすくなります。ではなぜ逆にバクテロイデーテス門の細菌が多いと太らない(痩せる)のでしょうか。これには短鎖脂肪酸が重要な役割をはたしています。短鎖脂肪酸はビフィズス菌やバクテロイデーテス門の腸内細菌が食物繊維を発酵する時に産生されます。ヒトでは、酢酸、プロピオン酸、酪酸が代表的な短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は脂肪細胞にある短鎖脂肪酸受容体に作用して脂肪細胞へのエネルギーの取り込みを抑え、脂肪細胞の肥大化を防いだり、神経細胞にある短鎖脂肪酸受容体にも作用し、交感神経系を介してエネルギー消費を促すなどにより痩せやすくします。また、酪酸やプロピオン酸はGLP-1と呼ばれる腸管ホルモンを分泌し、脳に作用して食欲を抑えたり、糖尿病の予防・改善効果もあります。この他に短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギー源として使われたり、大腸を酸性に保ち、悪玉菌(大腸菌やウエルシュ菌など)の増殖を抑制する効果や二次胆汁酸などの発ガン性物質が出来にくくする効果もあり、腸を健康に保ちます。

 さらにクリステンセネラ・ミヌータと言う細菌が痩せに関わっているとする研究論文が2014年の『Cell』に発表されました(Goodrich JK, Waters JL, Poole AC et al: Human genetics shape the gut microbiome. Cell. 2014 Nov 6;159(4):789-99.)。『Cell』と言えば『Nature』と並び世界的に権威のある米国の細胞生物学の雑誌です。米国のコーネル大学の研究グループは、クリステンセネラセエ(Christensenellaceae)科の細菌はBMIの低いヒト(痩せているヒト)の腸内に多いこと、さらに肥満マウスにクリステンセネラ・ミヌータを定着させると体重増加が抑制されたことを証明しました。クリステンセネラ・ミヌータは食物を分解して短鎖脂肪酸を産生し、脂肪細胞の肥大を予防することで体重を減らす作用があると言われています。

 アッカーマンシア・ムシニフィラという細菌も「痩せ菌」と呼ばれています。体重、肥満度指数(BMI)、血中コレステロール値、空腹時血糖値が高いヒトでは、腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラが少ないと言われています。太ったマウスにアッカーマンシア・ムシニフィラを加えた食事を与えると、マウスの体重が減ったという研究報告や、マウスに高脂肪の餌を与えて太らせると、アッカーマンシアが減少し、食物繊維を与えると再び増加することなどが分かっています。

 過体重(11人)あるいは肥満の成人(38人)を対象とした研究では、アッカーマンシア・ムシニフィラを豊富に有する被験者が、健康な代謝状態(特に空腹時血糖、中性脂肪、体脂肪)を示しました。また、6週間のカロリー制限をした後に、アッカーマンシア・ムシニフィラを豊富に有する被験者においてインスリンの感受性が改善しました。このようにアッカーマンシア・ムシニフィラの存在量とインスリン感受性及び健康な代謝状態との関連性が示されました(Dao MC, Everard A, Aron-Wisnewsky J et al: Akkermansia muciniphila and improved metabolic health during a dietary intervention in obesity: relationship with gut microbiome richness and ecology.Gut.65(3):426-36. 2016)。

 

 ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の研究チームは、肥満および2型糖尿病(成人発症タイプ)モデルのマウスの腸内には、アッカーマンシア・ムシニフィラが少ないこと、また、肥満および2型糖尿病モデルのマウスにアッカーマンシア・ムシニフィラを投与すると、高脂肪食による脂肪量の増加や代謝性内毒素血症、脂肪組織の炎症、インスリン抵抗性などの代謝異常を改善したことを報告しています。さらに肥満および2型糖尿病モデルのマウスにプレバイオティクスのオリゴフルクトースを投与すると、アッカーマンシア・ムシニフィラが増えて、脂肪量や体重が減少したことも報告しています(Everard A, Belzer C, Geurts L et al: Cross-talk between Akkermansia muciniphila and intestinal epithelium controls diet-induced obesity. Proc Natl Acad Sci. 28; 110(22): 9066-71. 2013.)。

 

 スウェーデンのヨーテボリ大学の研究チームは、食物に含まれる脂肪の違いが腸内細菌に与える影響について調べました。11週間、マウスにラード(ブタの脂)食を与えたグループと魚油食を与えたグループに分けました。魚油食を摂取したグループでは、アッカーマンシア・ムシニフィラとラクトバシラス属の細菌が増えましたが、ラード食を摂取したグループでは、アッカーマンシア・ムシニフィラとラクトバシラス属の細菌が減り、炎症を起こすビロフィラ属の細菌が増えました。さらに3週間、ラード食を与えたマウスに、魚油食で飼育したマウスあるいはラード食で飼育したマウスの糞便を移植したところ、魚油食で飼育マウスの糞便を移植されたマウスでは、アッカーマンシア・ムシニフィラが増加し、炎症のレベルが低下していました(Caesar R, Tremaroli V, Kovatcheva-Datchary P et al: Crosstalk between Gut Microbiota and Dietary Lipids Aggravates WAT Inflammation through TLR Signaling. Cell Metab. 22(4):658-68. 2015)。

腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを保つためには

 

 腸内の善玉菌が悪玉菌を抑えて、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが保たれていると、健康を維持出来ますが、何らかの原因で悪玉菌が増えると、腸内腐敗が促進され、アンモニアやインドール、スカトール、硫化水素などの有害物質や細菌毒素が産生されます。これらは腸管から吸収され、肝臓、腎臓などに負担がかかり癌などの生活習慣病の原因となります。

 腸内細菌叢(腸内フローラ)の善玉菌と悪玉菌などのバランスは日々の食習慣(偏食、食べすぎ、飲みすぎ)や睡眠、ストレス、過労、運動、加齢、抗生物質の服用などの影響を受けて変化しています。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が減少し、ウェルシュ菌などの悪玉菌が増加することが知られています。

  • バランスのよい規則正しい食習慣
  • 肉食に偏らず、食物繊維を十分にとる
  • 十分な睡眠をとる
  • 過度なストレスをさける
  • 適度な運動習慣
  • プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた食事(シンバイオティクス)    
プロバイオティクス

 宿主(ヒト)に健康効果を発揮する生きた微生物やそれを含む食品のことを言います。ビフィズス菌の含まれたヨーグルトや乳酸菌から作られたぬか漬け、味噌、キムチ、納豆菌から作られる納豆などの発酵食品などがあります。現在、プロバイオティクスとして用いられている細菌は、主にラクトバシラス属やエンテロコッカス属、ビフィドバクテリウム属に属する菌種です。

 

プロバイオティクスとしての条件

 ①もともと宿主と共生関係のある常在微生物であること、②胃酸や胆汁酸などの消化管上部のバリア内でも生存し、腸内に届くこと、③消化管下部で増殖可能なこと、④便性改善、腸内細菌叢のバランス改善および腸管内腐敗物質の低減などの有効効果を発揮すること、⑤抗菌性物質の産生や病原細菌の抑制作用を有すること、⑥安全性が高いこと

プロバイオティクスの代表である乳酸菌・ビフィズス菌の効果

 腸内環境の改善,便通の改善,免疫の活性,抗アレルギー作用(花粉症、アトピー性皮膚炎など),有害物質の解毒,発がんリスクの低減,感染防御(病原菌・ウイルス増殖抑制),血中コレステロールの軽減,血圧降下作用など

ビフィズス菌

 グラム陽性の偏性嫌気性桿菌の一種で、ビフィドバクテリウム属に属する細菌の総称を言います。約32種の菌種が存在し、基準種はビフィドバクテリウム・ビフィドゥムです。1899年、フランスのパスツール研究所のティシエによって健康な母乳栄養児の糞便より発見されました。形状は棒状でV字やY字に分岐した特徴的な形をしています。乳酸菌は動物の腸管以外に発酵食品や乳製品などにも存在しますが、ビフィズス菌は動物の腸管以外には生息していません。全ての動物の腸内に生息していますが、人間の腸管(特に小腸下部から大腸)には特にビフィダム種、ブレーベ種、ロンガム種、インファンティス種、アドレスセンテス種が生息しています。ビフィズス菌は酸素を嫌うため主に酸素のない大腸に生息しています。善玉菌の99.9%(約1兆個~10兆個)

 ビフィズス菌は、生後7日ごろから優勢になり始め、およそ1カ月後には、安定したビフィズス菌主体の細菌叢となります。乳児の頃はビフィズス菌の腸内フローラにおける割合は95%以上ですが、離乳期以降は食事摂取により、腸内には様々な菌が増えてきて、ビフィズス菌数も減少していきます。成人では腸内フローラの約20%となります。さらに加齢によりビフィズス菌は減少し、老年期には1%程度にまで減少していまいます。

 ビフィズス菌は、乳糖やオリゴ糖を分解して乳酸、酢酸を作ります。酢酸により腸内が酸性になり、悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を良好にする働きがあります。腸内で酢酸を作ることができるという点において、ビフィズス菌は同じ善玉菌として知られる乳酸菌よりも、優れたプロバイオティクスであるといえます。

 ビフィズス菌はビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、ニコチン酸などのビタミンB群やビタミンKを合成する働きがあります。また、花粉症などアレルギー症状の緩和やコレステロール値を低下させる効果なども確認されています。

乳酸菌

 炭水化物(糖類など)を発酵してエネルギーを獲得し、多量の乳酸を産生(消費したグルコース量に対して50%以上の乳酸を産生)する一群の細菌の総称を言います。1857年に近代細菌学の開祖ルイ・パスツールによって最初に発見されました。現在、乳酸菌と呼ばれる属種は30以上、菌種は250を超えています。乳酸菌はその形状から乳酸桿菌(棒状あるいは円筒形の形)、乳酸球菌(球形)に分けられます。善玉菌の0.1%(約1億個〜1000億個)

 乳酸菌は腸内を酸性にして病原菌や腐敗菌の増殖を抑制します。乳酸菌が抑制する有害細菌には、ブドウ球菌やバチルス、クロストリジウム、リステリア、サルモネラ、ビブリオなどがあります。

 腸の蠕動運動を助けて便秘を改善する効果があります。その他、免疫機能の向上や中性脂肪・血中コレステロール値を低下させる効果があります。

主な乳酸菌

ラクトバシラス属

ラクトバチルス・ブルガリクス,ラクトバチルス・ガセリ,ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株(ヤクルト菌,LCS)など

エンテロコッカス属

フェカリス菌FK-23株,フェカリス菌EF-2001株など

ストレプトコッカス属

サーモフィルス

 

乳酸菌を含む食品

 はっ酵乳,乳酸菌飲料,ヨーグルト,発酵バター,チーズ,発酵肉製品,発酵水産食品(なれずし、糠漬など),野菜・果実加工品(漬物、ぬか漬け、キムチなど)日本酒,ワイン,味噌,醤油など

 
プレバイオティクス

 善玉菌を増殖させ、活性化させることで腸内環境を整える作用をもつ食品成分のことで善玉菌の餌になるものを言います。プレバイオティクスの条件としては、①消化管上部(胃、十二指腸、小腸の上部)で消化吸収されない、②下部小腸、大腸に生息する有益な細菌の栄養源となり、それらの増殖を促進する、③大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善維持する、④ヒトの健康の増進維持に役立つなどが挙げられています。

 プレバイオティクスには、①オリゴ糖や②水溶性食物繊維、③不溶性食物繊維があります。食物繊維は、「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。食物繊維は、ヒトの消化酵素によっては消化されませんが、大腸内の腸内細菌が発酵することによって、短鎖脂肪酸やメタン、二酸化炭素、水素などに分解されます。短鎖脂肪酸は大腸より吸収されて人体にとって有益な作用を発揮します。厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準」では、1日あたりの「目標量」は、成人男性20g以上、女性18g以上となっています。

オリゴ糖:難消化性で腸まで届き、腸内にいるビフィズス菌などの善玉菌のエサとなり、その働きを活発にします。代表的なオリゴ糖には、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシリオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロースなどがあります。食品としては、タマネギ、ゴボウ、アスパラガス、キャベツ、トウモロコシ、にんにく、ネギ、大豆などの豆類、ハチミツ、バナナ、牛乳などに含まれています。

水溶性食物繊維:腸内にいる善玉菌のエサになります。善玉菌は食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸を産生し、大腸粘膜の保護や発がんの予防、肥満の予防、糖尿病の予防・改善、食欲の抑制、免疫機能の強化など健康維持のために様々な作用を発揮しています。

成分の主なものにはペクチン、グアーガム、グルコマンナン、イヌリン、アルギン酸などがあり、ワカメやコンブなどの海藻、寒天、コンニャク、果物などに含まれています。

不溶性食物繊維:便の量を増やし、腸壁を刺激することによって大腸の蠕動運動を活発にします。成分は植物の細胞壁をつくるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどで、豆類、全粒の穀物、野菜、芋、キノコ類などに含まれています。

 
短鎖脂肪酸

 腸内細菌が難消化性の食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸を産生します。ヒトの場合、酢酸、プロピオン酸、酪酸が代表的な短鎖脂肪酸です。酪酸は大腸の栄養源、酢酸とプロピオン酸は肝臓や筋肉で代謝利用されます。

①大腸の保護作用

 酢酸が病原性大腸菌などの毒素を防ぎます。

②発がんの予防

 短鎖脂肪酸が腸内を弱酸性にし、有害物質である二次胆汁酸をできにくくします。また、酪酸には、大腸細胞の異常な増殖や病変を抑制します。

③肥満の予防

 短鎖脂肪酸が脂肪細胞へのエネルギーの取り込みを抑え、脂肪細胞の肥大を防ぎます。また、交感神経系を介してエネルギー消費を促進します。

④食欲の抑制

 酪酸やプロピオン酸はGLP-1と呼ばれる腸管ホルモンを分泌します。GLP-1は脳に作用して食欲を抑える働きがあります。

⑤免疫機能の調節

 腸は全身の免疫細胞のおよそ70%が集中し、免疫機能に重要な役割を果たしています。免疫細胞のうちリンパ球であるT細胞は、免疫系を活性化して体内に侵入した病原菌などを攻撃しますが、T細胞の仲間である制御性T細胞(Tレグ細胞)は、過剰なT細胞の働きを抑える役割を果たしています。このことから制御性T細胞(Tレグ細胞)は、アレルギーや自己免疫疾患などを抑えることがわかっています。理化学研究所、東京大学、慶應義塾大学の共同研究チームは、クロストリジウム目の腸内細菌が産生した酪酸が、体内に取り込まれて免疫系に作用し、制御性T細胞(Tレグ細胞)を増やす働きがあることを証明しました。同研究チームはマウスに食物繊維が多い食事を与えると、腸内細菌の活動が高まり酪酸の生産量が多くなることや、この酪酸が制御性T細胞(Tレグ細胞)の発現を高めていることを発見しました。さらに大腸炎モデルマウスに酪酸化でんぷんを与えた場合、制御性T細胞(Tレグ細胞)が増加し、大腸粘膜の炎症性細胞が抑制されていました。この研究内容は世界的に権威のある英国科学雑誌の『ネイチャー』に発表されました(Furusawa Y, Obata Y, Fukuda S et al: Commensal microbe-derived butyrate induces the differentiation of colonic regulatory T cells. Nature. 504(7480): 446-50. 2013)。また、2018年1月にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」第4集・腸でも紹介されました。

シンバイオティクス

 サプリメントなどで善玉菌を摂取しているだけで、善玉菌のエサとなる食物繊維の豊富な食品をあまり摂取していなければ、腸内で善玉菌があまり増えず意味がありません。また、高脂肪食ばかり摂取していると胆汁酸がバクテロイデーテス門などの多くの細菌を殺してしまうことになり、腸内細菌叢のバランスが崩れていまいます。そこで有用な善玉菌を食品から摂取する「プロバイオティクス」と腸内に住む善玉菌のエサとなるオリゴ糖・食物繊維を摂取し、善玉菌を増やして活性化させる「プレバイオティクス」をバランスよく摂取する『シンバイオティクス』が重要になります。

 「プロバイオティクス」として善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌をヨーグルトから摂取(200~300g/日)し、「プレバイオティクス」としてオリゴ糖や食物繊維を多く含んだ海草類や果物、豆類、キノコ類、野菜、芋類をバランス良く摂取することで相乗効果が期待できます。

腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性

 腸内細菌叢(腸内フローラ)の菌種数が減少し、細菌の多様性が低下した状態を「ディスバイオシス(腸内細菌叢の構成異常・不均衡)」と呼びます。ディスバイオシスは腸内細菌叢(腸内フローラ)の機能が低下した状態で、細菌が産生する代謝物の種類が減少し、体に様々な悪影響が出てしまう可能性があります。腸内細菌叢(腸内フローラ)の菌種の多様性は健康維持に必要不可欠であり、プレバイオティクスに該当する食品の摂取を増やすとともに、不足しがちな不溶性・水溶性食物繊維やオリゴ糖などをバランスよく摂取して腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性を維持することが重要です。

腸管免疫

 腸管の機能として小腸は栄養分の消化吸収を行い、大腸は食物残渣から水分を吸収し便を作っていますが、もうひとつ重要な働きとして免疫機能があります。腸管には私達の体に必要な栄養分(食べ物)や口から入ってくる病原菌、ウイルスなどに常にさらされています。これらの病原菌、ウイルスを排除して身を守るために、腸管には体で最大の免疫器官(約70%)が備わっています。腸管の免疫系は、パイエル板や小腸上皮細胞にある腸管固有リンパ球、粘膜固有層にある粘膜固有リンパ球などで構成されています。腸管に侵入した病原菌などの抗原は、パイエル板にあるM細胞によって体内に取り込まれ、樹状細胞やマクロファージ、T細胞、B細胞などの主要な免疫細胞に抗原情報を伝達します。抗原が病原菌と判断されれば抗体(主に免疫グロブリンA(IgA))が産生され、免疫反応により病原菌を排除します。また、抗体を作る細胞は腸管粘膜だけでなく口や鼻などにも移行してIgAを作り、全身の免疫機能として働いています。

 一方、食物などの体の維持に必要な成分や腸内細菌には免疫反応が起こらないように有害な病原菌と識別が行われています。この機能は経口免疫寛容と呼ばれ、なんらかの原因で経口免疫寛容が機能不全を起こすと食物アレルギーを引き起こします。

腸内細菌の免疫系への影響

 これまでに腸内細菌と免疫系の多くの研究が世界中で行われ、その成果が著明な科学雑誌に報告されています。その結果、バランスがとれた腸内細菌叢が腸管の免疫系を活性化することで健康が維持されることや逆に腸内環境のアンバランスな状態が、全身の免疫系を過剰に活性化し、アレルギーや自己免疫疾患などを悪化させている可能性がわかっています。

 たとえば無菌状態にしたマウスでは、腸管にある免疫組織のパイエル板が未発達で、リンパ球や抗体であるIgA産生細胞が少ないことが報告されています。また、ビフィズス菌であるビフィドバクテリウムが豊富なマウスにはアレルギー反応を引き起こすIgEが少ないことやアレルギーをもつ子供の腸内細菌叢には、ビフィドバクテリウムや乳酸菌であるラクトバシラスが少なくクロストリジウムが多いことなども報告されています。

 東京大学の本田賢也博士らは、消化管に常在するクロストリジウム属細菌が、免疫抑制に必須の細胞である制御性T細胞(Tレグ細胞)の産生を誘導することを明らかにしました。Tレグ細胞は、炎症性腸疾患や関節リウマチなどの免疫システムの過剰応答を抑制するのに重要な役割を果たすT細胞の一種です。通常のマウスの大腸にはTレグ細胞が多数存在していますが、無菌マウスでは激減していました。さらに、クロストリジウム属細菌が大腸内のTレグ細胞を顕著に増加させました。また、クロストリジウム属細菌を多く持つマウスは、腸炎やアレルギー反応が起こりにくいことも発見しました。この研究論文は世界的権威のある米国科学雑誌の『サイエンス』に掲載されました。(Atarashi K, Tanoue T, Shima T et al: Induction of colonic regulatory T cells by indigenous Clostridium species. Science. 331(6015): 337-41. 2011)

 さらに本田博士らの研究チームは、制御性T細胞(Tレグ細胞)を誘導するヒトの腸内細菌の同定に世界で初めて成功しました。健康なヒトの糞便からTレグ細胞を誘導する17種類のクロストリジウム属菌を同定しました。さらにこの17菌種の混合物をマウスに投与すると、大腸のTレグ細胞が増加して腸炎や下痢が有意に抑制されました。また、17菌種の多くが、健常者群に比べて炎症性腸疾患患者群の糞便で有意に減少していました。この研究論文は世界的権威のある英国科学雑誌の『ネイチャー』に掲載されました。(Atarashi K, Tanoue T, Oshima K: Treg induction by a rationally selected mixture of Clostridia strains from the human microbiota. Nature. 500(7461): 232-6. 2013)

 理化学研究所の研究チームは、クロストリジウム目の腸内細菌が産生した酪酸が、アレルギーや自己免疫疾患を抑える働きのある制御性T細胞(Tレグ細胞)を増やすことを明らかにしました。また、制御性T細胞(Tレグ細胞)がIgA抗体の産生を介して、腸内細菌叢のバランスを制御している一方で、バランスのとれた腸内細菌叢が、腸管における制御性T細胞の誘導やIgA抗体の産生に有効に働いていることも発表しています。

 大阪大学の免疫学フロンティア研究センターの研究チームは、腸内細菌が産生する乳酸・ピルビン酸が免疫を活性化する仕組みを解明し、2019年2月の世界的権威のある英国科学雑誌の『ネイチャー』に掲載されました。乳酸菌であるラクトバシラスが産生する乳酸・ピルビン酸がマクロファージ上のGPR31受容体に結合すると、マクロファージは樹状突起を伸ばし、病原性細菌を効率よく取り込むことを発見しました。マクロファージは白血球の一種で、貪食細胞とも呼ばれます。体内に侵入した病原体などを捕食して消化します。さらに消化した病原体の抗原情報をヘルパーT細胞に提示します(抗原提示)。(Morita N, Umemoto E, Fujita S et al: GPR31-dependent dendrite protrusion of intestinal CX3CR1+ cells by bacterial metabolites. Nature. 566 (7742): 110-114. 2019)

 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室の研究グループは、CD8T細胞と呼ばれる免疫細胞を活性化させる11種類の腸内細菌を同定し、2019年2月の世界的権威のある英国科学雑誌の『ネイチャー』に掲載されました。CD8T細胞はIFNγ(インターフェロンガンマ)を産生し、病原菌による感染症予防や抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。バクテロイデーテス目の細菌7株(バクテロイデーテス属、パラバクテロイデーテス属など)と非バクテロイデーテス目の細菌4株(フソバクテリウム属、ユーバクテリウム属など)が協調してCD8T細胞を活性化することが証明されました。(Tanoue T, Morita S, Plichta DR et al: A defined commensal consortium elicits CD8 T cells and anti-cancer immunity. Nature. 565(7741): 600-605. 2019)

 これまでに解明された免疫系に対する腸内細菌の働きの一部を紹介しました。以上のように腸内腸内細菌は免疫系に重要な役割を果たしており、腸内環境を整えることが感染症の予防や癌、膠原病、アレルギー疾患など様々な疾病の予防に重要であると言えます。

花粉症と腸内細菌

 花粉症は花粉による季節性のアレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎の総称です。一方、ハウスダストやダニ、カビ、ペットの毛などが原因となるものは通年性アレルギー性鼻炎と言います。花粉症は植物の花粉が、鼻や眼などの粘膜に接触することで、くしゃみや鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの症状が引き起こされます。花粉症をもつ人は年々増加し、現在、国民の約4人に1人、3,000万人以上が罹患しているとされ国民病とも言われています。

 花粉症の原因となる植物には、樹木ではスギやヒノキの他にシラカンバ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、ブナ、ヤシャブシなどがあります。草本ではカモガヤなどのイネ科の花粉症が多くなってきていますが、他にキク科のブタクサ、ヨモギ、アサ科のカナムグラなどの植物があります。

 スギ花粉は花粉症の原因で最も多く(約70%)、2月〜4月をピークに、10月~12月にかけてもわずかに飛散します。ヒノキ花粉の飛散はスギに約1ヵ月遅れて3・4月がピークになります。シラカンバ花粉の飛散時期は4~6月で北海道での花粉症の主な原因です。ヤシャブシは近畿地方に多く、花粉は1月〜4月にかけて飛散します。イネ科の花粉は種類が多いために、春から初秋までの長い期間(4~6月頃と8~10月頃にピーク)飛散します。ブタクサやヨモギなどのキク科とカナムグラは夏の終わりから秋(8~10月)にかけて飛散します。

 花粉症に罹患する人は、遺伝的にアレルギー体質であることが主な原因と言われています。近年、花粉症が増加した要因としては、飛散する花粉数の増加、食生活の変化、大気汚染、睡眠不足や不規則な生活、ストレスなどにによる自律神経のバランスの乱れ、腸内細菌の変化などがあります。

 花粉症はアレルギーのなかでI型アレルギーに分類されます。アレルギーは、外から体内に入ってきた異物(抗原)を排除するために働く免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こった状態です。アレルギーを引き起こす抗原をアレルゲンと呼びますが、花粉症では植物の花粉がアレルゲンとなります。

 目や鼻などの粘膜に花粉が付着すると、マクロファージ(貪食細胞)が取り込み、花粉を非自己(異物)であると認識します。免疫細胞のうち胸腺で成熟するリンパ球であるT細胞には病原体などを攻撃する細胞障害性T細胞免疫反応を促すヘルパーT細胞があります。さらにヘルパーT細胞にはTh1細胞(主として感染症時に働くT細胞)とTh2細胞(主としてアレルギーに働くT細胞)が存在します。Th1細胞は細胞障害性T細胞を活性化して病原体などを攻撃します。一方、Th2細胞はマクロファージが取り込んだ花粉が異物であるという情報を骨髄で成熟するリンパ球であるB細胞に伝えます。そして、B細胞はその情報をもとにして花粉アレルゲンと特異的に反応する抗体を作ります。

 このときに産生される抗体はIgE(ヒトの抗体にはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれ働きが異なります)です。アレルゲン(花粉)の最初の侵入でIgEが作られ、IgEは肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球という白血球に結合します。この状態を"感作"と呼び、アレルギー反応(花粉症)を起こす準備ができた状態となります。感作の状態であっても花粉症を発症しない人もおり、発症には個人差があります。アレルギー反応はある一定のレベル(閾値)を越えた時に発症すると考えられていますが、その詳細はわかっていません。感作した状態で再びアレルゲン(花粉)が入ってくると、アレルゲン(花粉)が肥満細胞に結合したIgEと結合し、ヒスタミンなどの物質が分泌されます。ヒスタミンは血管を拡張し、炎症を起こして鼻粘膜に浮腫をおこさせたり、くしゃみ中枢を刺激したりすることで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を起こします。また、眼の粘膜でも同じことが起こり、眼の充血や痒み、涙の分泌などの症状がでます。ちなみにI型アレルギーは抗原(アレルゲン)が体内に入るとすぐに免疫反応がおこり症状がでるため即時型アレルギーとも呼ばれています。I型アレルギーには花粉症の他に蕁麻疹や気管支喘息、食物アレルギー、アナフィラキシーショックなどがあります。アナフィラキシーショックは全身性のもので、血圧低下などによりショック状態を起こすものです。

 花粉症発症の原因にヘルパーT細胞であるTh1細胞とTh2細胞のバランスの乱れが関係していることが言われています。花粉症やアレルギーに関係するのがTh2細胞で、抗原の情報をリンパ球のB細胞に伝えてIgEを産生するように誘導します。さらにT細胞には過剰なT細胞の働きを抑える働きをしている制御性T細胞(Tレグ細胞)があり、これらのT細胞が互いにバランスをとりながら免疫をコントロールしています。何らかの原因でTh2が過剰になったりTレグ細胞が弱まったりすると、免疫バランスがくずれアレルギーが発症すると考えられています。したがって花粉症などのアレルギー対策のポイントは、免疫バランスを整えることだといえそうです。

花粉症と腸内細菌

 近年、スギ花粉症の症状(くしゃみ、鼻水、眼のかゆみ、涙など)が乳酸菌シロタ株やビフィズスBB536などの摂取により軽減することが、多くの臨床研究で明らかにされています。また、腸内細菌が花粉症の症状を軽減させるメカニズムとして、免疫系への作用が確認されています。例えばアレルギーの原因となるIgE抗体の抑制やヘルパーT細胞であるTh1細胞/Th2細胞のバランスの改善、さらに制御性T細胞(Tレグ細胞)の増加などが報告されています。

腸内細菌叢(腸内フローラ)に対する鍼灸の効果

 

 腸内細菌叢(腸内フローラ)に対する鍼灸の効果については、あまり多くは研究されていませんが、動物実験によって鍼や灸の刺激が腸内細菌の多様性を改善させたとする研究報告があります。

IBS(過敏性腸症候群)と腸内細菌叢に対する灸・鍼通電刺激の効果

【方法】ラットの直腸にバルーンを挿入し、1分間0.5mlの空気を注入して直腸に拡張刺激を与えた。これを14日間連続で行いIBS(過敏性腸症候群)モデルラットを作成した。灸刺激は天枢(ST-25)と上巨虚(ST-37)に5mmの艾スティックを10分間、燃焼させた(7日間)。鍼通電刺激は天枢(ST-25)と上巨虚(ST-37)に2Hz、4mAで20分間、電気刺激を与えた(7日間)。

【結果】直腸拡張刺激による腹壁のひっこみ反射(腹筋の収縮)のスコアがIBSモデルラットでは正常ラットに比べて増加したが、灸刺激、鍼通電刺激により減少した。大腸組織の病理所見はいずれも変化がみられず、正常だった。IBSモデルラットでは糞便中のラクトバシラス属が減少する一方でバクテロイデーテス属、プレボテラ、クロストリジウムが増加し、多様性が減少していた。灸刺激はこれらを改善し、多様性を増加させた。

【まとめ】灸刺激や鍼通電刺激は腸内細菌叢(腸内フローラ)に影響を与え、IBSモデルラットの腹痛や腸管の知覚過敏を改善した。

Wang X, Qi Q, Wang Y et al: Gut microbiota was modulated by moxibustion stimulation in rats with irritable bowel syndrome. Chin Med. 13:63.  2018.
肥満と腸内細菌叢に対する鍼通電刺激の効果

【方法】正常マウスより20%体重が増加した肥満マウスに鍼通電刺激(30Hz,2〜3mA,10分間)を7、14、21、28日間行った。刺激部位は天枢(ST-25)、関元(CV-4)、足三里(ST-36)、三陰交(SP-6)とした。

【結果】鍼通電刺激により肥満マウスの体重、総コレステロール値、中性脂肪値、脂肪組織の重量、脂肪細胞の大きさが減少した。いずれも7日間の鍼通電より28日間の鍼通電の方が減少していた。また、鍼通電は腸内細菌の菌種を増加させ、腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性を増加、改善した。

【まとめ】鍼通電刺激はコレステロールや脂肪を減少させることにより体重を減少させ、肥満による腸内細菌叢の多様性の減少を改善させた。

Si YC, Miao WN, He JY et al: Regulating Gut Flora Dysbiosis in Obese Mice by Electroacupuncture. Am J Chin Med. Oct 4 :1-17. 2018.
潰瘍性大腸炎と腸内細菌叢、免疫機能に対する灸刺激の効果

【方法】潰瘍性大腸炎モデルラットに灸刺激(10分間,1回/日)を7日間あるいは14日間行った。刺激部位は天枢(ST-25)とした。

【結果】潰瘍性大腸炎モデルラットの大腸粘膜のダメージ(腸腺数の減少、粘膜・粘膜下層への炎症細胞の浸潤)が灸刺激で改善した(炎症細胞の減少、うっ血の減少)。また、潰瘍性大腸炎モデルラットでは腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性が減少していたが、灸刺激はこれを改善した。

【まとめ】灸刺激は、腸内細菌叢の多様性の減少・構成の異常を改善し、潰瘍性大腸炎の腸粘膜のダメージを修復した。

Qi Q, Liu YN, Jin XM et al: Moxibustion treatment modulates the gut microbiota and immune function in a dextran sulphate sodium-induced colitis rat model. World J Gastroenterol. 24(28):3130-3144. 2018.

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